新年のご挨拶

日本ダンス・セラピー協会
会長 大沼小雪

新年あけましておめでとうございます。会員の皆様におかれましては、健やかに新年を迎えられたこととお喜び申し上げます。

昨年は126代目の新天皇が即位し、年号も令和になり一新した気分になりました。天皇になるための数々の儀式を見ていて、ふと千日回峰行を終えた大阿闍梨を彷彿させられました。与えられた儀式と自ら挑む10年近い修行という大きな違いはありますが、存在や意識のあり方が変わることを覚悟するという点では共通しているように思われました。

さて、今年はどのように生き、どのような活動をしていくのか。私的には今年は退職の年でもあり、どのように楽しいことを実行していくか、新しいことへの挑戦にワクワクしている自分がいます。バートランド・ラッセルは「幸福論」の中で、「多くの事物に興味を持てば持つほど、より多くの幸福の機会をもつことができる。そしてそれだけ運命の慈悲にすがらなくてすむ。なぜなら、好奇心が強く多くの興味の対象を持っている人間は、一つの事物を失っても、別の事物に目を移すことができるからである」と述べています。先が見えている年齢になってきたので、どの位新しい挑戦ができるかわかりませんが、想像をめぐらすだけでも、幸せな気分になります。

新しい挑戦ではありませんが、日常の中にあるトラブル、臨床のことを考えることも自分を鍛える方法のように思えます。心痛める事件をニュースで知るとき、自分を責めることでエネルギーを使っている臨床のケース、混雑している電車やバスの中のトラブルなどにおいても心地よい関係について考えてしまいます。泣いている子どもや赤ちゃんがいれば、近寄ってにっこり笑ってみます。駅のホームでいきなり怒鳴っている人をみると、怖さよりどんな人かに関心がいきます。もちろん自分の安全というものも視野には入れますが…。ちょっとしたトラブルに出会うことは、振り返ると自分の引出の中身が充実していく機会だと気づかされます。特に臨床で出会う困難な事例は、自分の経験と知恵と想像力が試され開発されるときで、そのケースに出会うことで自分が成長していくように思います。

本協会においては、国際的な活動している方々が増えていることは大変喜ばしいことと思います。政府間での行き違いがあったとしても学術的な国際交流のニュースは嬉しいものです。また研修講座においては、若い方のエネルギーを感じ、同じ方向を目指している仲間として大変心強く思います。まだまだ小さな団体ですが、一人ひとりが豊かにつながって大きな輪になることを願っています。

現代は、どんな災害が起こるのか予測できない時代になっています。失ったものや過去への執着は誰でも経験することですが、徐々に自分自身に向けていた関心を未来に向けて、広汎に広げていき、意味ある生を生きたいと考えております。その手助けができるのがダンスセラピーでもあるように思います。今年も会員同士の交流を深め、ダンスセラピーが発展することを願っています。