第32回JADTA学術研究大会 ポスター発表:眞﨑(参加者限定)

ポスター発表3

保育者養成における保育者の身体性に対する理解に向けて

眞﨑雅子(華頂短期大学)

【背景】保育者に求められる身体性という課題は、保育者と子どもの信頼関係を構築する上で欠かせない基盤となる。ダンスセラピーの中核的概念の一つである身体的共感との関連も深い。そのため、保育者養成においては、実習前に保育実践の観察を通して保育者の身体性に対する理解を深めることが有意義であると考える。発表者は、これまで保育学生を対象にした調査を実施し、保育場面の「保育者と子どもの繋がり」に着目させた観察記録から、保育学生の主な視点カテゴリ―として、「スキンシップ」「共同」「身体掛け」等を抽出した。

【目的】本稿では、先行調査で得られた視点カテゴリ―に基づき、異なる保育場面動画の観察記録から保育学生の視点を確認し、保育者の身体性への認知を促す手立てを得ることを目的とする。

【方法】2022年4月、A大学の保育者・教員養成に関する授業において、2年生17名を対象に、B幼稚園の日常保育の映像を視聴させ、「映像の中の保育者が、子どもと繋がるためにどのようにかかわっているか」の教示に基づき、感じ取ったことの自由記述をさせた。17名の自由記述はそれぞれ意味のまとまりごとに分節化し、先行研究のカテゴリーに基づき分析した。

【結果と考察】保育者の身体に関する記述は主に5つのカテゴリーに分類され、『だっこ』などの記述は視点カテゴリ―の「スキンシップ」に、『一緒に』などは「共同」、『ゆらす』などは「身体掛け」、『怒ることなく』などは「見守り」、そして「声掛け」に該当した。一方、『だっこ』の記述に対し、『寄り添ってだっこしたり』や『強制的にだっこして』など捉え方の異なる記述が確認された。

これらの結果から、より客観的且つ詳細な観察視点を獲得するためには、保育者や子どもの動きの質に着目させたり、ダンスセラピーにおける運動分析を活用したりすることが有意義であると考えられ、身体性への認知を促す手立てが得られた。


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11投稿。
向出章子 向出章子 投稿日時 : 2023年9月1日 - 6:08 AM
眞﨑先生、ご回答ありがとうございました。私も身体による共振、共鳴、また同調等の言葉の意味の使い分けをいつも悩んだりしています。とりわけ身体に使う場合はどのように使うか私も迷ったりしています。
むつかしいですね。また勉強したいと思います。貴重なご発表ありがとうございました。
眞﨑雅子(発表者) 眞﨑雅子(発表者) 投稿日時 : 2023年9月1日 - 12:34 AM
向出先生 関心をもっていただきありがとうございます。今、「共振(共鳴)」と「発信(共振)」の違いについて、改めて確かな納得のいく回答が見つけられず・・かなり感覚的に用いて理由付けしたところがあったと反省しています。前回のnaka先生への回答も苦しいものでしたが、今後見直して、修正をさせていただきます。ご指摘いただきありがとうございました。   
眞﨑雅子(発表者) 眞﨑雅子(発表者) 投稿日時 : 2023年9月1日 - 12:13 AM
葛西先生 貴重なコメントをいただきありがとうございます。鯨岡理論をベースに保育者の身体について考えているところです。先生の鯨岡先生についてのお話もお聞きしたいです。ところで、自由記述の集約化・数量化の方法について、大変苦労しています。先生のご提示されたKH法という分類方法について詳しく教えていただきいです。また、抽象度の高い「統合的な状況」について、何かしらパターンを見出したり、概念要素を階層化したりするようなことはできないだろうかと考えています。今後ともご指導いただけますよう、どうぞよろしくお願いいたいます。
向出章子 向出章子 投稿日時 : 2023年8月31日 - 3:03 PM
保育学生の視点の傾向を確認して保育者の身体性の認知を促す手立てを得るというこの研究は関心があります。ご発表ありがとうございました。やはり学生につながりという視点をもってみると、学生の観点も変わりますね。多く見いだされたのは、「共振(共鳴)」「発信(共振)」だったのですね。
私も質問された方と同じで、(一方向)共振、(双方向)の共振は、どんな相違があるのかと思っておりました。共振というのはどちらもということで捉えていましたが、すでに回答されていますので。また、多く見いだされた「共振(共鳴)」と「発信(共振)」なのですが、この時の「共振」と「共鳴」の違いはどういった意味で捉えたらいいのでしょうか。
また、この2つの言葉は、同じ意味のように使われていることが多いですが、(私も使っています)身体に使う場合、二語同時に並列で使用することは適切なのかを自問自答しています。よろしくお願いいたします。
葛西俊治 葛西俊治 投稿日時 : 2023年8月30日 - 9:01 AM
追伸。
「カテゴリー化」というと抽象度の高いことに向かうわけですが、複数の概念や状況・内容が組み合わさって初めて意味を成すような「統合的な状況」がある場合、抽象度を高める方向では把握できそうにない…。そうしたことを懸念して考えていたことを思い出しました。
葛西俊治 葛西俊治 投稿日時 : 2023年8月30日 - 8:55 AM
以下は感想です。
・個人的な関心に過ぎませんが、鯨岡先生が文献に載っていたのは嬉しく思いました。
・カテゴリーを「分類」という方法で進めていて、それはそれで良い訳ですが、「自由記述の集約化」に数量化的情報を提示する方法を以前まとめました。
KH法と呼んでいますが、数量化3類を用いて、自由記述の集約化と数量化をする方法です。参考まで。
Naka Naka 投稿日時 : 2023年8月24日 - 9:44 AM
眞﨑先生、ご回答ありがとうございます。
「一方向」というと反応が返ってこないイメージがあり、「共」と結びつかなかったためご質問させていただきました。「発信」というワードがあるとわかりやすくなりました。
眞﨑雅子(発表者) 眞﨑雅子(発表者) 投稿日時 : 2023年8月23日 - 2:41 PM
Naka先生、ご質問いただきありがとうございます。  ①視点カテゴリーの(  )内の意味について・・・・視点カテゴリーの作成は、3人の共同研究者によるトライアンギュレーションという方法を用いました。その際、下位カテゴリーを括る大カテゴリーを一つの言葉の意味では網羅できず、この点を強調する意味もあり、2つの意味に絞りました。共振・共鳴につきましては、共振の中の、とくに音(5,4,3・・・とカウントダウンするリズミカルな声や音)による共振を指して共鳴としたという理由もあります。                        ②共振の(一方向的)と(双方的)について・・・
 「一方向的」は、保育者からの発信がきっかけとなって起こった共振と捉えており、「双方的」は両者の思いが相互に・同時に起こったのがきっかけとなっていると捉えたことによります。                少々苦しい回答となったように思いますが、この命名については再考の余地があるとも考えております。さらにご助言、いただけると幸いです。
眞﨑雅子(発表者) 眞﨑雅子(発表者) 投稿日時 : 2023年8月23日 - 1:49 PM
さきやま先生、コメントありがとうございます。視聴者は皆、ひとつの同じ映像を見ているのに、捉え方の違いはどこからくるのだろうかと考えました。「だっこ」前後の両者の関係性をどう見たのか、動きの質をどう捉えたのか、認知バイヤスによるものもあるのかなど、興味深く、今後の研究方法についても検討していきたいと思います。また運動分析による評価について詳しく学び活用することで、保育者の身体性に対する認識を高められるよう研究を進めていけたらと思います。
さきやま さきやま 投稿日時 : 2023年8月22日 - 12:26 PM
保育者の身体性に着目されたご研究で、『だっこ』の捉え方の違いが見いだされたところがとても興味深く思いました。この二面性が今後の観察視点にどのように反映されていくのか、ぜひ今後も継続して研究成果をご発表いただけることを希望します。
運動分析では、ひとつの動きにも複数(それも意味が正反対の場合もあり)の意味や解釈があると思うので、考察で述べられていることとまさにつながっていくと感じました。
Naka Naka 投稿日時 : 2023年8月22日 - 7:29 AM
貴重なご発表ありがとうございます。

先行研究に関して不勉強で大変申し訳ないのですが、
①「視点カテゴリー」にかっこ書きの語を記載しているのはなぜか
②「(一方向的)共振」と「(双方的)共振」との違い

についてご教示いただきますよう、お願いいたします。