第35回 JADTA研修講座報告

研修講座委員会委員長 大沼小雪

第35回研修講座 概略(開/閉)

日時:2025年2月15日(土)・16日(日)
会場:埼玉県産連研修センター
プログラム:
Ⅰ基礎論  1.概論Ⅰ  ダンスセラピーの歴史とその系譜 (町田章一)
Ⅰ 基礎論  2.概論Ⅱ  身体表現学(松原 豊)
Ⅱ 実践論  4.高齢者領域 (大沼小雪)
Ⅳ 実践技法 1.ボディトーク(永井順子)
Ⅳ 実践技法 3.チェイスメソッド(鍛冶美幸)
Ⅱ 実践論  6.身体障害領域(松原 豊)
Ⅳ 実践技法 8.対象者に特化した実践技法:生涯教育
        「今、子どもたちのからだに起きていること」(照屋 洋)
Ⅳ実践技法:4.多様なダンス 参加者とのダンス交流(大沼・照屋・平舘ゆう)

告知ページ

2025年2月15 日、16 日の2日間、埼玉県武蔵浦和駅から徒歩10分の距離にある埼玉県産連研修センターで開催されました。駅からは少し距離がありましたが、広い会議室の中に、講義の場と動けるスペースを設定していただき、移動がスムーズでした。

今回の参加者は22名、そのうち会員は4名で非会員が大多数でした。北は北海道、南は九州、関西からの参加者もおりました。また、男性のダンサーも4名おりました。熱心な参加者の方々と交流していると、スタッフ、講師側も心身充実した感覚が得られたのではないか思います。

受講生の方々には、講師毎に学んだこと、感想を書いていただいており、それを少しご紹介したいと思います。

◎1日目

町田章一先生「基礎論:概論Ⅰ ダンスセラピーの歴史」

  • 欧米と日本のDTの歴史や特徴などを、先生のご経験や事例も挟みながら学ぶことができた。
  • 歴史に関しては、その時代の背景に大きく影響を受けていること、各国の文化が影響し、日本では協調性という特徴から集団でのセッションが多いこと、言葉で伝えなくても、心で通じ合うことから言語化しないことも多いことなど、とても多くのことを学ぶことができた。
  • ダンスセラピーの定義は自分で作っていくもの、というのが印象的だった。
  • セラピストとして、自分のパーソナリティ、動き、自分を素材として提供していくには、自ら問い、学び続けることの大切さを思った。わかりやすく、温かい講義だった。

松原 豊先生「基礎論:概論Ⅱ 身体表現力」

  • 軽快な話術とワークを交え、楽しく学べた。無意識的な表出から表現としての舞踊まで、様々身体表現があること、身体言語やそれを読み取る力が生後早期から備わっていることなどを学んだ。
  • 「弱い」人にも力があり、周囲の助けを引き出すようにコミュニケーションをとれば目的を達成できる。表現理論や動きの分析など、勉強してみたいと思っていたので、嬉しかった。
  • ラバノテーションから分かれて創られたLOD(Language of Dance)の活用の試みも改めて見直したいと思った。非言語表現について、観察力を豊かにするには、自らも身体の意識を豊かにしたいと思った。グループでの実技はとても楽しかった。

大沼小雪先生「Ⅱ実践論 5高齢者領域」

  • 個人個人を尊重しながら、リハビリ的要素も考慮する動きが必要なことを学んだ。
  • (実技で)相手を高齢者として想像して社交ダンスをすると、すぐにダンスとダンスセラピーの違いを感じた。見つめること、話しかけること、触れること、立つこと、の4点が認知症ケアメソッドにおいて重要。
  • 先生とペアで動いた際、「相手に寄り添う」「夢の世界へ誘う」ということを実体験できた。年齢に関係なく、いつでも希望を与えられるものだと知ることができた。
  • 個々への対応(加減)をタッチングから感じとれるよう、セラピストの感覚を研ぎ澄ますことが重要と思った。ペアでダンスすることが無かったので、相手の動きを見ながら踊るのは難しいと感じた。

永井順子先生「Ⅳ 実践技法 1.協会認定の実践技法:ボディトーク」

  • 自分の声と体を使ったセルフチューンのようなボディトークは最高に面白かった。テクニックも年齢や国籍も関係なく、遊びながらコミュニケーションがとれてなおかつ身体も元気になれる。もっと遊びたいと思った。
  • 「体が喋っている」という言葉に一番感銘を受けている。また、動物を模倣して体を解すことも印象的。
  • 全体を用いて参加者全員で行うとのできるワークばかりで面白かった。
  • ペンギン歩きは、骨盤の歪みが気になっているので取り入れたい。
  • 言葉と体の密接なつながりを実体験できた。相手に寄り添うために、まず、「自分を緩める」という事の大切さを学んだ。幅広い分野での活用ができるように感じた。

1日目を通して

  • いろいろな角度や実践を通して、ダンス(身体表現)の可能性を掘り下げる講義だったと思う。
  • その場の臨機応変な対応ができる力も必要と感じた。
  • ジャンルにとらわれず、自身のスタイルを構築する、身体の状態や精神的な問題を違った視点で改善へ導く、他者だけでなく、自身に対しても有効であるダンスセラピーの概念を詳細に学ぶことができた。
  • ダンスセラピーというものを実証していく上では欠かせない授業だったと思う。
  • 型のあるダンスだけでなく、もっと幅の広い動きを用いていいのだと、ダンスセラピー講義の中で認識した。
  • 参加者の方とも交流することができて非常に楽しかった。

要望:DTの現場の見学や助手の経験を積みたい。そういう場所の紹介をしてもらえると嬉しい。

◎2日目

鍛冶美幸先生「Ⅳ実践技法 3.海外のダンスセラピー技法(チェイスメソッド)

  • 動きだけで一体感を得ることができること、言葉がなくても通じ合えること、何より楽しく動くことができること、ダンスの意義を改めて考え直す機会になった。
  • 心と体の解放、仲間との一体感を感じ、すごく楽になった感覚を味わえた。
  • 参加者全員がひとつの作品を作り出したように感じている。この場で起こっていることに名前をつけて解釈を投入することに感銘を受けた。
  • 円形でお互いが見えるチェイシアンスタイルが鏡の役割をすることを知ることができた。
  • だんだんと周りの人との距離を近づけていくのがすごいと思った。
  • その人のペースに合わせて作り出すことで、心がほぐれ笑顔が生まれる。
  • 楽しい中に、色んな事に感謝する温かい気持ちが沸き起こってくる講義だった。
  • 先生の言葉が力強く、胸に響いた。

松原 豊先生「Ⅱ 実践論 6.身体障害領域」

  • アイマスクをつけて、パートナーに従って動くこと、自分がダンスしている姿が見えないが、他の人の姿を見て、アイマスクを付けたままでも美しいダンスができるのは不思議だと思います。
  • 視覚を閉ざすことで気づくこともあり、音をすごく敏感に感じた。もっとやってみて踊りにしてみたい。聴覚障害の方と無音でダンスしてみたいと感じた。手首を乗せて歩く、そしてダンスもできるのは初めて知った。
  • 障害があっても踊れる方法を考えることがとても勉強になった。
  • 視覚を触覚と他者で補う感覚を初めて体験できた。暗い中でも進む方向に光のようなもの見えた気がした。
  • 相手との信頼感を築く重要性にも改めて気づかされた。
  • ダンスを通してのアプローチの可能性を学ぶことができ、貴重な体験となった。実技では、お互いにゆだね合う信頼関係が生まれているのが不思議な経験となった。

照屋 洋先生「Ⅳ実践技法 5.対象者に特化した実践技法:生涯教育」

  • 「主体的なからだを取り戻す」ことに対して大変感銘を受けた。自分の体をどのように動かすかを決めることによって、世の中で自分が何かコントロールできる感じを取り戻すことができるかなと思う。
  • 講義中に泣きそうになった。改めて自分に気づくきっかけになった。生涯教育について学びを深めたい。
  • 日ごろから相手を思いやってコミュニケーションを取りたいと思った。
  • 自分自身が体と言葉を取り戻す作業がDTでは…と感じた。
  • ここまで人を元気づけられるのかと感動した。
  • 失敗することの安心、自由に動くことなどを体験できた。学ぶ=行動が変わるという言葉に出会えて感動した。現場での経験に基づいた事例は、何かとても励まされた。
  • 人をよくみる、関係性を大事にする、自らの心と体の動きを大事にする、楽しく動きながら、自分で気づいていく、ということを学んだ。

大沼小雪 先生 他「Ⅳ 実践技法 4.多様なダンスを基盤とする実践技法」

  • 「Dance is communication, Dance for communication」という言葉を胸にダンス人生を楽しんでいきたい。
  • 参加者一人一人にダンスの歴史があり、個性がある。体とこころの繋がり、人とのつながりについて、温かな気持ちで見つめる自分がいることに気づかされた。
  • 色々なジャンルのダンスをする人が集まって、色々な動きができて面白い。
  • どのようなDance Th. になるかについては正解がない。
  • 色々なダンスを見て、楽しいし、刺激をもらった。自分もありのままを出して踊れたと思う。
  • 皆、違うけれど、仲間で不思議な感じもした。自分の番がきて皆が踊ってくれることも嬉しいと素直に喜ぶことができた。色々なダンスを踊ることができて、本当に楽しかった。
  • うまくできるかできないかではなく、とりあえず動いてやってみることで楽しめることを体験できた。
  • 普段なじみのない動きを真似てやってみると、どれも新鮮な感覚が残った。皆で踊ることで、より繋がりを感じた。
  • 先生方のあたたかな眼差しや働きかけを見て、それこそが大切なのだと感じた。

2日間を通しての感想

  • 非常に楽しかった。ダンスを用いて仲良くなれることや心を通わせることができることを改めて感じた。
  • 人の心を動かせるダンスの偉大さを改めて感じた。ダンスは世界を救う。
  • それぞれのメソッドを使った講座や特徴があるものを面白く感じた。
  • ダンスセラピーの技法は一見シンプルなものだけど、その世界の豊かさや深さは、今、生きているありようを問い直すものでもあった。ダンスセラピストは人間が”生身のからだを持っている“ということ確認する仕事をしていると感じます。
  • 4回目の参加。来るたびに気づきや頂くインスピレーションが深く楽しくなっているのを感じます。
  • 終始アットホームな雰囲気で、先生方も素というかありのままの感じがダンスセラピーならではのように思いました。

今後の要望

  1. 今後どのようにセッションの場を持てば良いか等、相談できるところがあると嬉しい。
  2. 現場で様々な人、障害者、高齢者、子供とかかわりたい。
  3. 各先生の勉強会、ワークショップがあれば是非お知らせ頂きたい。
  4. 照屋先生のアプローチ、時間をかけて受けてみたい 

 受講された方々、丁寧にたくさん感想を書いて頂きありがとうございました。また、次の機会にお会いできることを楽しみにしております。

要望1のセッションの場に関しましては、次回の研修講座でお話できればと思います。