会長 町田章一
明けましておめでとうございます。みなさま、お健やかに新年をお迎えになったことと思います。
昨年もいろいろなことがありました。中でも、英国のEU離脱決定とトランプ氏の当選は大方の予想に反した結果となり、驚きました。と同時に、メディアの働きを改めて考える良い機会になりました。20代半ばの頃、ベルギーで開かれた国際学生平和会議に出席したことがあります。その時、広島の原子爆弾で犠牲になった方の人数を聞かれ、「日本政府の発表では・・・」と答えたら、「政府の発表ではなく、あなたが把握している人数を教えて下さい。貴方はインテリなのですから」と言われて答えに窮したことがありました。政府や新聞の発表など、大方の情報や意見はそれとして、自分自身の考えとその根拠を示すよう要求されたわけです。これはなかなかできることではありませんが、常に頭の片隅に置いておく必要があるのではないかと思いました。昨年の米国大統領選挙ではフェイク・ニュースが飛び交ったようです。また、長年ニュース解説を続けてきたダイアン・リームは「真実を見極める力が必要です」という言葉を残して引退したそうです。情報を無批判に鵜呑みにすることを戒めています。
ところでダンスセラピーにも同様のことが言えると思います。教科書に書いてあること、先生や仲間から教えてもらったこと、これらはあくまで参考意見であり、ヒントに過ぎないと思います。実際にセッション、研究、講義、執筆をする時には、それまでに学んだことは勿論のこと、自分自身の考え、判断、創意、工夫などを総動員する必要があります。見たこと、聞いたこと、体験したことをそのまま真似ても現実には上手く行きません。何しろ、ダンスセラピーの中心にはセラピストと対象者の個性(性別、年齢、雰囲気、センス、芸風・・・)があり、それを取り巻く状況は一つとして同じものはないからです。
私達は今、これまで以上に予測できない世界に生きています。それでも健康で、楽しく、善く生きるためには何を基本に据えて考えたら良いのでしょう。「体が楽」「気持が良い」「楽しい」「仲が良い」「善良」などがキーワードとして浮かびますが、それらはすべダンスセラピーに結び付くように思います。今年も互いに切磋琢磨して、会員それぞれのダンスセラピー、ひいてはダンスセラピー全体を発展させて行きましょう。