大会

第28回学術研究大会in山武(中止)報告

第28回大会会長 貴船惠子

会員の皆様、原稿を書いている現在、晩秋に落ち葉が散り、冬の足音を感じるようになりました。こうした日本人ならではの季節の挨拶も、年間を通しての異常気象、9月以降の台風被害を考えると、いずれはなくなってしまうのではないかと不安です。第28回学術研究大会の台風19号による中止で、お申込みいただいた会員の皆様にお会いできずにとても残念です。中止の際には多くの皆様より暖かいお言葉とご支援をいただき、本当にありがとうございました。中止後の残務処理もあり、お一人お一人に返答ができずにおり、この場をお借りして御礼を申し上げます。

中止迄の準備過程で、大会会長として感じて考えた事を、皆様と共有させて下さい。

まず、私が山武市で大会を開きたいと要望したために、2018年6月に町田顧問(当時協会会長)が会場の視察に山武市へ同行下さいました。東日本大震災で津波被害を受けた山武市が、津波の指定避難施設として建設した、蓮沼交流センターの視察後に、顧問より「ダンス・セラピーと被災者支援」のテーマを提案されました。被災者支援に対して全く無知であった私が、【2018年北海道大会】の後の胆振東部地震を経て、真剣に勉強をはじめました。

調べていく中で、日本の被災地でダンス・セラピー実践を行った記録は見つかりませんでした。身体を動かす点では、避難所でエコノミークラス症候群予防の運動を行ったり、単発的にプレイ・セラピーのような事をした記録にとどまりました。

その中の文章を書いた筑波大学の筆者に連絡をしたところ「JRAT(大規模災害リハビリテーション支援関連団体協議会)の一員として派遣された時のもので、個人では全容が掴めない。茨城県の理学療法士会に問い合わせをしてはどうか?」との案内を受けました。最終的には茨城県理学療法士会が平成27年9月の関東・東北豪雨の時に鬼怒川が決壊して、常総を支援した報告書を見せていただきました。全部読み終え、DMATやJRATと言った職能での被災地支援団体がある事を認識しました。

不勉強を恥じたのは、この後に被災の様子を知りたいと「常総豪雨」のワードで動画の検索をした時でした。常総豪雨の様子がまとまったサイトがあり、その中のビデオの一つに見覚えがありました。それは平成27年9月12日に、私が隅田川沿いを歩いていた時に撮影し、投稿したものでした。「いつもはこんなに水位がないのに、手が届きそう。」と川に手を伸ばす動画で、見た方からの動画のコメントには、「11日の常総の豪雨で川が氾濫したからよ。隅田川はつながっているのよ。」と書いてありました。私は自分がビデオを豪雨の翌日に撮影した事は忘れており、先の報告書を読んだ時でさえ思い出す事もありませんでした。実際に被害に遭っていないから思い出すこともなく、川がつながっていることすら認識外で、コメントを読みながら赤面しました。

この頃には、「日本ダンス・セラピー協会の基金を使用し、被災地で活動を行った記録はとても貴重である。」と考えており、特別企画には被災地でダンス・セラピーを行った認定ダンスセラピスト2名(大沼小雪会長と平山久美理事)にお願いしたいと決めておりました。

そうした日々の中でやりにくいと感じたのは以下の点でした。

・東日本大震災一つとっても、地域が広く、津波・地震・原発と問題部分は地域によって違う。各県の「こころのケアセンター」などでもその地域のことしか把握ができておらず、横の連携がうまく取れていると思えない。

・復興までの道筋で、継続的に同一人物が同一被災地で行なっている、ムーブメントを使用した支援が見つからない。

出会いはある日突然来ました。全く別件でダンス・セラピーの話をした相手から、「自分のやっていることがダンス・セラピーに当たるのかわからないが、話を聞くととても似ている。」とビデオを見せてくれました。東日本大震災後に、被災地の子供たちになされた支援で、災害時にそれができるように講師養成しているそうです。アメリカのFBF財団が世界各地で被災地の子供達に向けて行う〔Playshops cultivate resilence〕メソッドを、東日本大震災後にこの財団より派遣された方々が、被災地を周りながら日本に合わせた形を模索・実践していき、現在はNPO法人「絆2030」が管理を任されていました。遊びの要素を取り入れたムーヴメントセラピーで、リズムからはじまり、呼吸を整えていき、そこに自然な形で動きをプラスし、最終的には基本的な情動を表出させていく方法は、ダンスセラピストがそれぞれに、セッションに結びつけていけると思えました。たくさんのダンスセラピストに紹介して、災害時に活用して欲しい気持ちが強まりましたが、大会中止でそれを説明・体験いただく機会を逃し、残念です。

発表申込をされていた方々も、残念だったことでしょう。

発表抄録を読んでみて、私なりにこの大会の発表傾向に注目した点がありました。それは山田美穂先生の発表「ダンス・セラピーにおける見る/見られる体験の意味」に代表されるような、アートであるダンスで「見る/見られる」関係性を考えた時、その体験の療法的意義をあらためて考えてみようという内容が複数あった事でした。ポスター発表の糸数七重さんや、八木ありさ先生の演題発表内容にもそれを感じました。こうした事では会員の稲川麻子先生も、【ダンサーとの創作過程〜発表におけるセラピー効果】を考えて活動をしていると存じ上げております。

ダンス・セラピーが生まれてから50年経ち、この間にさまざまなダンス・セラピーの技法が報告され、模倣され、確立されて、学術研究大会や、日本ダンス・セラピー協会が携わった刊行本でも学ばせていただきました。50年で社会や地球を取り巻く環境も大きく変わり、今また原点に帰り、今に適合したアートとしてのダンスの療法的意義を、創作過程も含めて「見る/見られる」立場から、それぞれが模索しているのかもしれません。

私は第28回目にして、初の中止及び赤字を協会に出した大会会長となり、頑張って準備をしただけに落ち込みました。

11月末時点での会計報告となりますが、元々の大会参加者より振込まれた参加費は516,400円でした。大会当日に支出する金額(弁当代など)と事務局の経費を併せても、支出は376,501円で、残金は今後の大会準備金に繰り入れられる予定でした。しかし、中止により大会参加費を返金することにしたので、事務局で準備に使用した180,701円の赤字を出しました。

参加費用をお支払い下さった複数の方々より、被災した大会開催予定の山武市及び、赤字を出した今大会に対しての篤志でのご寄付がありました。寄付金額は、205,834円でした。うち、110,000円は山武市企画政策課に、義援金と見舞金に振り分けて近日寄付予定で、残りは大会経費の赤字分を補わせていただきました。

①義援金:被災者の方に市からお配りします。
②見舞金:災害による被害を受けたことにより必要になった経費について支出するものです。その結果、11月末でのこの大会での赤字予定額は85,866円となっております。

今回の事務局はスタッフ連絡にはSNSを多用し、共有書類は今後の引き継ぎも含めて、セキュリティを強化する点からも、ネットクラウド上で預り、そこでやり取りしました。そのため、今までには発生しなかった通信費用などがかかったことも、事務上の特徴でした。さらにSNSを使用し、大会概要全文をスタッフの長澤あゆみさんが崎山ゆかり先生の協力の元で英訳し、アメリカやヨーロッパのダンス・セラピー関連の複数のグループに紹介致しました。

大会事務局は10月13日を持ち解散と考え、その後に続く返金処理には大沼会長や複数の方々にご協力をいただきました。特に処理連絡などを受けいただいた八木事務局長と、直接返金に関わって下さった協会事務局の大参様に感謝申し上げます。そして、解散後も複数の確認にお付き合いいただいた大会スタッフにも感謝しております。

最後に、このテーマに関わり、被災地においてダンス・セラピーで多くの方々に支援の手を伸ばしていくためには、ダンスセラピストという職能を、今以上に社会的に引き上げていく努力も必要に思います。社会的信用度の高い職業人がチームになり、DMAT(医療)やJRAT(理学療法)のように被災地に人を派遣できるようになるためにです。今回被災地での【ムーブメントと音楽療法での活動】を報告予定であった永井順子先生によると、音楽療法協会では国家資格化を目指して動いているとのことです。国家資格=社会的信用の構図は否めません。しかし、最近は様々なところで「ボランティア」を頼みにする現象がみられます。被災地ではボランティアの活動は重要で、来年のオリンピックやパラリンピックもボランティア頼みの部分が多くあります。ボランティアは専門職でなくても、必要とされているのです。だから、その中でも有能な活動をしたと認められる方に、スーパーボランティアという言葉が生まれ、一般の人も知るところとなりました。勿論国家資格への道は時間がかかっても考えるべきですが、今ダンスセラピスト一人一人ができることは、「ダンス・セラピーを通して私たちは被災地で必要とされる活動ができる。」と声を上げて実践することだと思います。そのために、改めてこのテーマを誰かが取り上げて下さり、学術研究大会で会員同士が交流し、学びとなる日が来ることを心より願っております。ありがとうございました。


山武大会企画を再び

2020年1月6日
日本ダンス・セラピー協会会長 大沼幸子

会員の皆様には、それぞれの分野でご活躍のことと存じます。

去る台風19号において、被災されました皆様に心よりお見舞い申し上げます。
この日企画されていた殆どのイベントは中止に追い込まれ、私たちの第28回大会も断念せざるを得ませんでした。開催地であった山武市は東日本大震災でも大きな災害を被り、そのことに思いを馳せ、また活動していた貴船惠子大会会長は、熱い思いを抱いてこの度の企画を練っておりました。大会会長を自ら名乗り出て、あえて山武市を選んだ思いを私どもも心より応援しておりました。地方で行う場合は参加者も少ないことが多いのですが、今回はポスター発表、実技発表とも演題も多く、参加者に至っても会員以外に山武市の市民の方も参加申込みをされるなど、大会にかける貴船大会会長の意気込みが感じられる状況でした。中止は本当に無念でありましたが、多くの会員から大会会長を励まし労う声が届きました。私は大会開催中止に際し、このように会員が1つになって支え合う姿が嬉しく頼もしく思われました。

しかし、このままでは終わらせられない、そんな思いを抱いていると来年の大会会長の﨑山ゆかり氏から山武大会の企画の一部を取り入れて開催する案が出されました。なんと素晴らしいアイデアでしょう。来年の貴船氏の会長講演が実現することを、私たちは楽しみにしています。多忙な日々の中、実行委員として山武大会を支え、来年の企画を練っている﨑山氏にも心よりお礼を申し上げたいと思います。

私たちは大変な時こそ、成長するのだと思っています。苦難を乗り越える智恵が生まれ、人の温かさを知り、そして人の役に立ちたいと思うことができるのではないかと考えています。様々経験を活かしていきたいと思っております。

何はともあれ、貴船大会会長、渡辺英子氏はじめ、実行委員の皆様のこれまでの労をねぎらい、そして心よりお礼を申し上げたいと思います。