DMT地域派遣事業報告『虐待被害者として生きづらさを抱える女性たちのためのダンスセラピー体験』

企画責任者
マニシア

 2022年5月13日と5月14日の2日間、宮古島で予定していた対面でのダンスセラピーは、コロナ禍での挑戦でもあった。

 この事業は、福岡を拠点とするDV及び虐待被害女性の当事者支援団体アコアでのダンスセラピーに効果を感じ始めた頃、宮古島の当事者団体Ayanaの代表を紹介していただいたことから始まったという経緯がある。

 心に深い傷を負った、それも初めて出会う参加者たちとの体験会ということもあり、当初は感染も落ち着いていたので、アコアとのダンスで効果があると感じた劇場空間での実施を計画した。しかし、5月13日当日早朝、宮古島到着直後に、宮古島の病院でクラスターが起きたため、参加予定だった8名全員からキャンセルを受けたと知らされ、とりあえず、14日のみAyanaの代表とAyanaのコアメンバー2名の3名で実施することとなった。 

実施内容:

自己紹介の後、床に寝て身体の重さを預け、深呼吸をして、身体の部位ごとにゆっくりリリースしていくことを行なった。まず、つま先から足首まで、そしてふくらはぎ、もも、お腹、胸、お尻、背中、肩から肘まで、肘から指先まで、首、顔、頭皮、全身という順にギュッと力を入れる緊張と時間をかけて緩めていき、それぞれのボディパーツの完全なる解放を体感してもらった。全身に酸素を送るイメージの深呼吸後、ゆっくり寝返りをうつように、床で身体のポジションを変えながら、徐々に座っていった。BGMの音楽を流しながら、座位のままストレッチを誘導していき、それぞれの身体に必要なストレッチをそれぞれにリードしてもらうことも行った。徐々に、立位へと向かうようなストレッチから動きへと変化させながら、身体の声を聞くように、もっと動きたい部分にフォーカスし、音楽に合わせ自由に動いてみた。自然に全員が踊っていた。

水分補給の休憩後、画用紙を全員に渡し、身体を感じ続けるために、利き腕でない方の手で、この1週間の生活で辿った道をクレヨンでドローイングしてもらった。

 そして、そのドローイングを元に画用紙に描いた線を身体の部位を変えながら空間になぞりながら動くということをデモンストレーションし、全員でそれを行なった。それぞれが舞台上で位置や向きを選び、ドローイングの動きを続けながら、自分の声がけと共に、動きがダンスへと生まれ変わっていった。

最後に、空っぽの客席に向かって、一人ずつ感謝の踊りを踊り、空間に挨拶をした

シェアリングを行なった後、体験会を終えた。

 Ayanaの代表が、「言葉にならないモヤモヤを感じつつドローイングをし、自分が何に苦しみ、何を大事にしたかったのかに気付く。それを身体で表現することで、安心感に近いものが、カタチになり、具現化される。観客のいない客席に向かってのカーテンコールは、怖いと思っていた人達から、思わぬ愛を受け取る瞬間。自分で自分を許す。愛を受け取ることを、自分に許す。ダンスセラピーは、言いっぱなし聞きっぱなしの自助グループの言葉のセラピーとも、瞑想会の自分の体にフォーカスするセラピーとも違って、自分と他者と社会との融合や関係性の変革を促すものだった。」と、感想をFacebookに記載してくれた。

 代表自身も5月に入り、ご主人の暴力の再発で、数日前まで3人の子どもを連れて家を出て、シェルターで生活していた状態だったことを知った。そういう状況の中でワークショップ会場や参加者たちとのやり取りを行ってくれていたことに心から感謝した。また、周りの方々や他の地域のネットワークの方々の現状を伺い、ニュースなどで公表されている虐待に関する問題は、氷山の一角にしか過ぎないことを心から実感した。

今回地域派遣助成金をいただきながら、突然のコロナ感染拡大のためとは言え、計画よりも大幅に縮小されたことにとても申し訳ない気持ちである。しかしながら、近い未来、ダンスセラピーが一つの支援策として、日本全国に広く提唱できる日が訪れることを心から願うため、宮古島にダンスセラピーの小さな種を撒けたことを本当に感謝したい。