『ダンス・ムーブメントセラピー 癒しの技法』

フラン・J・レヴィ著 町田章一訳 岩崎学術出版社、2018年
370ページ、6,480円 Amazon

世界中で教科書として使われている本の翻訳です。

目次

第1部 初期の発展: ダンス・ムーブメントセラピーのパイオニアたち
 セクション A 東海岸における主要なバイオニアたち
  第1章 マリアン・チェイス: 「ダンスセラピーの母」
  第2章 ブランチ・エヴァン: 創造的なムーブメントがダンスセラピーになる
  第3章 リリアン・エスペナック 精神運動療法
 セクション B 西海岸における主要なパイオニアたち
  第4章 メアリー・ホワイトハウス: 深層ムーブメント:
     ダンスセラピーにおけるユング派の技法
  第5章 トゥルーディ・シューブ: ダンス、演劇、 パントマイム, パフォーマンス
  第6章 アルマ・ホーキンス: 人間性心理学, イメージ, リラクセーション
  ディスカッション 主要なパイオニアたちに見られる共通点と相違点
 セクションC その他の初期のパイオニアたち, 指導者たち, 功労者たち
  第7章 ダンスセラピーが中西部に現れる
  第8章 文献上に見られるパイオニア的な功績
   バート A. フランツィスカ・ボアズ: 影響力ある概念
   パート B. エリザベス・ローゼン試行錯誤
   パート C. ダンスセラピー研究
  ディスカッション 1960年以前に行われていた技法の概略

第2部 ダンス・ムーブメントセラピーのその後の発展
 セクション A 合衆国におけるラバン・ムーブメント分析とダンスセラピー
  第9章 ラバジとラムの理論的貢献
  第10章 イルムガード・バーテニエフがアメリカにLMA を伝える
  第11章 ニューヨーク立ブロンクス病院における時代精神
  第12章 マリオン・ノース 個人評価と療法
  第13章 ジュディスケステンバーグ:ムーブメント・プロフィール
  ディスカッション LMA:様々な見解
 セクション B ダンスセラピーの理論と実践がさらに普及する
  第14章 東海岸の影響 その後の発展
   パート A. エレイン・シーゲル 精神分析的アプローチ チェイスの影響もいく分受けて
   パートB ゾウィー・アフストレイ:チェイスやホワイトハウスを統合した精神分析的展望
  第15章 西海岸の影響 その発展
   パート A. イルマ・ドサマンテス・ボードリー:経験的ムーブメント精神療法
   パートB ダイアン・フレッチャー:精神力動的志向
   パートC ジャネット・アドラー:ウィットネスとムーバーとの関係
   パート D. ジョアン・チョドロウ:ホワイトハウスとユング
  ディスカッション 東海岸の傾向と西海岸の傾向を比較する
   パートE シャロン・チェクリンが体験した1972年
  第16章 様々な潮を統合する
   パート A. マルシア・レベンソール:一次治療としてのダンスセラピー
   パート B. ベニー・ルイス:折衷的アプローチ
  第17章 フラン・レヴィのマルチモーダル・アプローチ:理論と実践

第3部 様々な人びとに対するダンス・ムーブメントセラピー
 セクション A 子ども
  第18章 特別なニーズがある子ども
   パート A. 幼い子ども社会的、精神的身体的、認識的目標
   パートB 危険因子のある子どもたち:暴力予防
   バード C. 学校教育機構における十代の若者
   パート D. 学校における運動評価
   パードE. 重度障害を伴った子どもたち:
       精神科に短期入院している子どもたちに対するダンス・ムーブメントセラピー
   パート F. 自閉症児
   パート G, 性的虐待を受けた子どもたち
 セクション B成人
  第19章 精神科を受けている人びと
  第20章 身体的、性的、精神的虐待の被害者、及び、
     解離性同一性障害(または多重人格障害者)
  第21章 女性のスーザン・クラインマンとテレーズ・ホールによる)
  第22章 高戴者
 セクションC 様々な身体障害者に対する実践
  第23章 リハビリテーション (キャッシー・アッペルによる)
 セクションD ダンス・ムーブメントセラピーを応用する
  第24章 発達障害児者
  第25章 ダンス・ムーブメントセラピーの更なる応用
   パートA 企業場面におけるダンス・ムーブメントセラピー
   パート B. 家族
   パートC 盲人と視覚障害者
   パート D. ろう者と聴覚障害者

第4部 ダンス・ムーブメントセラピーの国際的普及
  序章(ミリアム・ロスキン・バーガーによる)
  第26章 ダンス・ムーブメントセラピーの国際的普及(キャシー・アッペルによる)

第5部 ダンス・ムーブメントセラピー研究:調査結果と系統樹
  第27章 研究に関する最近の見解(レノーア・ワズワース・ハーヴェイによる)
  第28章 研究外観:様々な知見:過去、現在、未来の動向
  第29章 ダンスセラピー系統樹:主なバイオニアたちの影響の広がり

訳者のことば

町田章一

 この度、長年の懸案でしたレヴィ著『ダンス・ムーブメントセラピー 癒しの技法』を出版することができました。本の末尾に以下のような紹介があります。

「本書は Fran J. Levy “Dance Movement Therapy : A Healing Art”, NDA,  AAHPERD, 2005 の全訳である。Fran J. Levy 先生の単著になっているが、実質的にはADTA(米国ダンスセラピー協会)の総力を挙げた著作で、すでに三版を重ねている。従って、ダンスセラピーに関する網羅的な教科書を一冊だけ挙げるとしたら、今のところ、この本より他には無い。また、この本を読まずにダンスセラピーを語ったり議論することは、国内においても国外においても難しいことだろう。本書はその位、重要な位置を占めている。」(レヴィ(2018)365)

要するに、ダンスセラピーを志す人、語る人は嫌でも応でも一度は読んでおかなければならない本だ、ということです。

実際に読もうとする場合に障壁になるのは値段が高いことです。6,000円+税、は誰にとっても躊躇する価格です。そこで私は以下のことを提案します。

  1.  国立国会図書館(東京都千代田区、京都府相楽郡精華町)に行けば自由に読むことができます。しかし、遠くて行けない人が多いことでしょう。
  2. 最寄りの公立図書館や大学図書館に購入希望を出す。しかし、これは手に入るまで時間がかかることでしょう。また、図書館が予算の都合で購入できない場合には私から寄贈しますので、ご連絡下さい
    shoichistanislav@outlook.jp
  3. 私の手元には著者割引で入手したものがありますので、お分けすることができます。郵送料(360円)を加えると5544円になり、市販されている価格より多少安くなります。また、私のサイン入りが欲しい方はその旨をご連絡下さい。

以上

翻訳書出版に寄せて

﨑山ゆかり

 ついに、とうとう、やっと…そんな言葉が浮かぶ、大著の日本語訳がついに誕生しました。JADTA前会長の町田章一先生のライフワークとも言える本著の翻訳は、この間15年もの長きにわたり、地道に本書と向き合われた末に生まれたものです。

30年以上前に「ダンスセラピー」という言葉を知り、この言葉を教えてくださった平井タカネ先生に「興味があるので本を貸してください」とお願いしたとき、「英語の原著しか日本にはないのよ」と英語の書籍を紹介してくださったことを思い出します。あのとき、すでにこの書籍があれば、どれだけ多くの情報を入手できたことだろうと、改めて思います。370ページにも及ぶ分厚い1冊は、アメリカでダンスセラピーを学ぶ人が必ず手にする基本テキストです。

本書は、アメリカの著名なダンスセラピストであり指導者であり、実践家かつ研究者でもあるFran J. Levy博士が1988年に出版されたDance/Movement Therapy A healing Artの第3版(2005年出版)の全訳書です。従来のアメリカを中心としたダンス・ムーブメントセラピーの歴史と理論と実践を包括的にまとめた中に、版を重ねたことで、新たに国際的普及の実態や研究の動向などが追記されました。これにより、さらに読み応えのあるテキストとなり、Levy博士の博覧強記ぶりが発揮されています。Levy先生自身が日本語版の出版に寄せて書かれた文章に、心身一如の概念についての言及があり、加えて日本人のお辞儀について、他者への尊敬を示す力強い非言語コミュニケーションだとの指摘もありました。

この第3版では、新たな分担執筆者が加わりました。キャシー・アッペル氏による国際的普及の章では、アメリカのダンスセラピストによる日本での活動や状況についての丁寧で詳細にわたる記述があります。この細やかな叙述によって、アメリカのダンスセラピー指導者たちが、日本のダンスセラピストたちとかかわり、日本国内でのダンス・ムーブメントセラピーの普及を支えてきた様子が伝わってきます。

5部構成全29章にも及ぶ大作の中で、個人的に特に興味深かった箇所を3つご紹介したいと思います。ひとつ目は、第2部「ダンス・ムーブメントセラピーのその後の発展 セクションA」における、アメリカのダンス・ムーブメントセラピーへの運動分析に関する3章に及ぶページです。ラバンの運動分析については、ダンス・ムーブメントセラピーに学ぶときに、必ず耳にする運動分析の基本ですが、本書では、加えてラム、バーテニエフ、ノース、ケステンバーグといった運動分析の専門家たちが、ダンス・ムーブメントセラピーにどのような影響を及ぼしたのか、その概要がさらっと述べられていて、運動分析の必要性を実感できる箇所になっています。2つ目は、あらゆる流れを本著にまとめたLevy博士自身のサイコドラマ、絵画、ダンス、音楽、文章表現を用いたマルチモーダル・アプローチの理論と6つもの事例がわかりやすくまとめられている箇所で、その見識の幅の広さが実感できます。3つ目は、第3部の「様々な人びとに対するダンス・ムーブメントセラピー」における対象者の豊富さです。第3版ではこのパートが第2版よりさらにわかりやすく編纂しなおされています。アメリカの第一人者たちのそれぞれの実践が、具体的に述べられています。皆さんが今向き合っているセッション対象者と、同じ課題や症状を持つ人々への多様なセッションの記述は、多くの具体的な示唆を与えてくれるでしょう。第3部を通読することによって、ダンス・ムーブメントセラピーの応用の広さ、すなわちダンス・ムーブメントが持つ癒しの技法が、時代や文化を超えた普遍性を、改めて心に刻むことができると思います。

この素晴らしいテキストが早く日本語で読めることを、私自身長年待ち焦がれていました。そして、ようやく手にすることができました。皆さんも是非手に取って、ダンス・ムーブメントセラピーの旅を楽しみながら、その奥深さにふれてください。

レヴィ先生に本を手渡す

町田章一

 本が出版されたことを先ず報告したい相手はレヴィ先生ご本人で、できれば私から手渡しして、出版が大幅に遅れたことを許して頂きたかった。はじめはニューヨークのご自宅へ伺うことになっていたが、ソルトレイクシティで開かれるADTAの大会ではどうでしょう、と先生から再提案があった。本を手渡すだけのためにNYに来るのは・・・と配慮して下さったようだ。

<ソルトレイクシティ>

そのような訳で平成30年10月9日、アメリカに旅立った。ソルトレイクシティに降り立って、タクシーの窓から見える景色は、だだっ広い平坦な荒野。遠くには北から東にかけて、むき出しの山々が重なり、ほとんど木が生えておらず、山頂付近は雪で覆われている。その山のふもとに、突如、町が現れる。西部劇で見る街並みの中に、30階建ての高層ビルが5,6棟。タクシーから降りると湿度がほとんど無いことが分かった。ソルトレイクシティの自然は大味で、放っておくと砂漠に戻ってしまいそうだ。

<偶然チェクリン先生に出会う>

散歩から帰り、昼寝から起きたら、もう夜の8時だった。急いで夕食をとり、レストランから出たロビーで、4,5人の仲間と連れ立って歩いて来るチェクリン先生に出会った。

急いで部屋に戻り、本を持って戻る。先生は全く昔のように元気で、生き生きとしていらっしゃった。私が日本風に献辞を書くのを嬉しそうに眺めていた。昨年はアルゼンチンでセッションをしたそうで、自分でもびっくりしたと言っていた。今日は杖を持っていたが、平坦なところでは必要ないが、階段を上るときに少しふらつくのと、視力が弱くなったので用心して持っているとのことだった。

マリアンチェイスの本を翻訳中だが、翻訳困難な箇所について助言をしてくれる人が欲しい、と伝えると、先生の娘さんのメールアドレスを書いてくれた。マーサさんがわからなければ、私に聞いて来るでしょう、ということだった。そのほか、私の近況を細々話すと、喜んで聞いてくれた。

<偶然、レヴィ先生に出会う>

翌日(10月10日)は朝から雨が降っており、時差ボケと合わせて冴えない出だしだった。ホテルのレストランで朝食バイキングを取り、そのあとは寝たり起きたりして午後4時まで過ごした。五時少し前にフロントに用事があって出かけた。

と、その時、チェックインをしているレヴィ先生に出会った。急いで部屋に戻り本を持ってきて、サインをしようとしたら筆ペンが無い。慌てて再び部屋に戻り、やっと探し出してサインをした。
「これは、歴史的なことよ、素晴らしいわ!」
と先生は何度も仰って、そばにいた多くのADTA会員にも紹介してくれた。二人でツーショットと思っていたが、レヴィ先生がみんなを誘ったので、集団写真となった。

レヴィ先生はまだ出版社から本を受け取っていなかったようで、大変喜んでいた。持参した残りの三冊も先生に託した。

これでソルトレイクシティでの用事は全て終わった。天の計らいでかくも円滑に事が進んだことに驚いている。自分で設定した思いをがむしゃらに実現しようとするのではなく、それはほどほどにして、あとは時の流れに身を任せることの大切さを感じる。

翌日、ADTAの大会が始まる当日の朝早く、私はプラハに向けて出発した。実はよんどころない用事があって、そのようになってしまった。しかし、レヴィ先生に本を渡せて良かった。

後日、お土産に差し上げた母の羽織に手を通したレヴィ先生の写真が届いた。さすがダンスセラピスト、ポーズが素晴らしい。

『ダンス・ムーブメントセラピー 癒しの技法』” への1件のフィードバック

  1. 初めまして、私は埼玉県在住の者です。 只今、日本社会事業大学で社会福祉主事(通信制)を勉強してます。 普段は社会福祉施設の総務課で働いてます。 休日には、クラシックバレエの講師のお仕事をしております。  本日、スクーリングで大学に行った際、ダンス・セラピーという本(著 八木ありさ教授)に出会い、とても興味を持ちました! 是非 町田先生のサイン入りの本をお願いしたいのですが。  どうぞよろしくお願い致します!

コメントは受け付けていません。